中小企業における事業承継(3)~M&A

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、企業の合併や買収を指す言葉です。

親族や従業員の中に適切な後継者を見つけることができない場合、
会社そのものを他社に売却したり、事業を承継してもらったりすることが考えられます。

M&Aの具体的手法

M&Aによって会社を承継させる具体的な方法としては、合併や株式売却、株式交換という方法があります。
また、会社の一部を他社に承継させる方法としては、会社分割や事業譲渡といった手法があります。

M&Aのメリットとしては、
 合併などによって事業の強化につながることがある
ことなどがあります。

他方で、会社とは会ったく関係のない者が新経営者となるため、
 従業員や取引先に混乱が生じたり、文化的摩擦が起こる場合がある
ことなどがデメリットとなります。

事業の一部を親族が承継し、他の事業を他社に譲渡するなど、
親族内承継とM&Aをを組み合わせる方法も考えられます。

※この記事は平成28年7月現在の法制度を前提に記載されています。

2016年7月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : kawaguchi.sogo

中小企業における事業承継(2)~従業員や社外への継承

従業員や社外への継承とは

本稿での事業承継は、簡単にいうと経営者の親族以外の人に事業を承継するケースです。
社内へ承継するケースでは、経営者の片腕だった役員やリーダー格の従業員などが考えられます。
この場合は、後継者が会社の事業に詳しく、内部の従業員に対しても親和性があることから、スムーズな引き継ぎが期待できます。

社外へ承継するケースは、会社の外から経営に詳しい人材を呼び寄せ、後継者になってもらうようなケースです。
取引先の金融機関や関連企業から人材を呼び寄せるような場合が多いでしょう。
経営に強い人材が集まる点が、このケースのメリットといえます。

これら従業員や社外への承継のデメリットは、
 事業承継に必要な株式取得等に資金が必要になる
 個人債務保証の引き継ぎが必要になる
ことが挙げられます。

従業員や社外への承継の具体的手法

従業員や社外への承継では、株式や事業用財産をどのように引き継がせていくかが問題になります。
まずは、後継者が旧経営者から生前贈与や死因贈与を受ける方法があります。
この場合には、贈与について旧経営者の相続人の理解を得ることが大切です。
相続人に財産的価値を残したままで、後継者が経営権を保有する場合には、相続人には議決権制限付株式を割当て、後継者が普通株式を継承するというやり方もあります。
また、後継者が旧経営者やその相続人から自社の株式を買い取るやり方もあります。
この場合には、後継者の資金力が問題になるでしょう。

従業員や社外への承継で大きく問題になるのが、個人債務保証の引き継ぎです。
中小企業では、金融機関から資金の融資を受ける際に、代表者個人が連帯保証人になっていることが良くあります。
その場合には、代表者が交代すると、金融機関が新しい代表者を保証人に加えるように求めてくることがあるのです。

後継者としては、個人債務保証を引き継ぐことになるのは大きな負担になります。
事業譲渡をする際には、できるだけの債務の圧縮を図ることが求められるでしょう。

※この記事は平成27年12月現在の法制度を前提に記載されています。

2015年12月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : kawaguchi.sogo

FX運営会社のキャッシュバック金不払いが違法と判断された事例紹介

今回は、最近になってトラブルが増加しているFXに関する裁判例を紹介したいと思います。

FXとは、「margin Foreign eXchange trading」の略で外国為替証拠金取引を意味します。

FXの会社や証券会社を通じて、外国為替を取引する金融商品です。

FXは、異なる2つの国の通貨を取引し、その差額が損益となります。

ドルやユーロ、円といった主要な国の通貨は、変動相場制を導入して、刻々と為替レートが値動きします。

その値動きの動向によってレートの差額を儲けようというのです。

 

10年ほど前から、インターネットを利用したFX取引が活発になりました。、

ネットで気軽に売買できることから、安易に手を出す人もいますが、
株や投資信託などと比べると非常に投機性のある商品であることを理解する必要があります。

さらにFX会社では「レバレッジ」と呼ばれる証拠金取引方式を利用していることが多く、
あっという間に何百万という損失が出ることもあります。

そのため、最近はFXが原因で経済的に破綻してしまったという相談も増えています。

FX商品はこのように非常にハイリスク・ハイリターンな商品ですが、
FX運営会社はさかんに(主にネット上で)広告を出しており、様々なキャンペーンを行って顧客を誘引しています。

以下の裁判例は、そのようなキャンペーンにまつわる事例です。

 

東京地裁平成26年6月19日判決(確定)

1 事案の概要

FX運営会社であるY社は、1か月の取引高に応じたキャッシュバック金を支払うというキャンぺーンを行っていました。
Xさんは、このキャンペーンに申込み、Y社を利用して多数の取引をした結果、
金190万円のキャッシュバックを受けられることになりました。
ところが、Y社はXさんが禁止ツールを利用して取引をしていたとして、取引約款の条項に基づいて、
Xさんの口座を強制的に解約し、キャッシュバック金も支払いませんでした。

2 争点

Y社の主張は、大まかに言うと、
(1)XさんがFX取引をする際に、他社の為替チャート等を参照していたことが「禁止ツールの利用」になる。
(2)Xさんの取引手法は、手動で行うことは難しく、禁止ツールを利用したに違いない
等といったものでした。

3 判決

(1)について、他社の為替チャートを参照して取引を行う行為は、禁止されるツールの利用とはいえない。
(2)について、Xさんの取引手法は、禁止ツールでなければ実行することができないものとはいえない。
としました。
そして、Y社が合理的な理由なくキャッシュバック金の支払いを拒否することは信義則上許されず、
本件ではY社に合理的な理由はないとして、Xさんの請求を全て認めました。

 

私見としては妥当な判決といえます。

FX取引は一時下火になっていましたが、最近また活発化しているように感じます。

消費者は、安易なキャンペーンに流されず、リスクをしっかりと見極めた上で、
利用するかしないかを判断していくことが必要でしょう。

 

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2015年9月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : kawaguchi.sogo

遺言書について

相続のトラブルは離婚と並んで、近年非常に増加しています。
その多くは、遺言書がないか、あっても内容が不明確ではっきりしないケースです。

多くの方は、遺言書を書くことに何とはなく抵抗があるようです。

しかし、遺言書は後で書き直すこともできます。
(複数の遺言書がある場合、新しい日付のものが有効になります。)
また、遺言書を書いたとしても、生前の財産の内容に影響はありません。
「そのうち」ではなく、「今のうち」遺言書を作成しておくことが、死後の親族間のトラブル防止になります

遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
その他にも、秘密証書遺言や危急時の遺言といった特別なものもありますが、
これらは非常に稀なものです。

自筆証書遺言は、自分で用紙を用意して内容を記載するもので、もっともポピュラーです。
公正証書遺言は公証人役場で作成するもので、検認などが不要になります。

また、遺言能力というものがあり、これがないと遺言書を作成しても無効となります。
遺言能力は満15歳から備わります。
成年被後見人の遺言は、事理弁識能力を一時的に回復し、医師2人以上の立ち合いが要件になるため注意が必要です。

遺言書を作成する際には、相続人全員の立場に配慮することが望ましいでしょう。
遺言書で特定の相続人に全部の財産を相続させても、他の相続人には遺留分があります。
そこで遺留分に配慮した遺言書を作成することで、後日の紛争を回避できます

また、予備的遺言・跡継ぎ遺言などを付記しておくと、後日に意外な結末になってしまうことを防ぐことができます。
跡継ぎ遺言とは、「甲土地をAに遺贈する。Aが死亡していた場合には、甲土地をAの子であるBに遺贈する。」というものです。
また、付言事項といって、遺言としての法的効力はないものの、関係者や相続人に対する感謝や遺言書の内容の理由・経過を遺言書に書いておくことができます。
何らかの事情で相続分が少なくなる相続人に対しても、理由や事情をメッセージという形で遺しておくと、トラブルの防止につながります

遺言書は、残された家族へのメッセージとしての意味もありますので、
きちんと作成しておくことが望ましいでしょう。

 

(本記事は、平成27年7月現在の法令をもとに記載しています。)

2015年7月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : kawaguchi.sogo