不貞の慰謝料請求ができる場合

一般の方にとって「相手が浮気をしたのだから、当然慰謝料が請求できるだろう」というのは、当たり前の感覚かもしれません。
しかし、法律に基づいて慰謝料を請求する場合には、いくつかの条件があります。

相手に不貞行為の認識があるか。

特に浮気相手に対して慰謝料を請求する場合に問題となる条件です。
不貞行為は、法律的に分類すると民事上の不法行為に該当します。
不法行為の要件として「故意・過失」が必要とされます。
故意とは「わざと」という意味で、不貞行為においては「相手が既婚者であると知りながら、あえて関係を持った。」ということが必要なのです。
また故意までは認められなくても、「通常であれば知りえたはずなのに、重大な過失によって知ることができなかった。」場合には不法行為責任を負います。

このように相手が既婚者であると知らず(またそのことに過失がない場合)に、男女関係に入った場合には慰謝料の請求はできません。
良くあるケースとして、
 ・既婚者側が独身者であると偽っていた
・お見合いサイトなど、当然に独身者が集まる場所で知り合った
というものがあります。
そのような場合には、自分の配偶者に対してのみ慰謝料請求をすることになるでしょう。

時々、本当は相手が既婚者であると知っていたのに、知らないと偽って慰謝料の請求を拒絶するケースがあります。
そのような場合には、メールのやり取りなどの記録から、故意があることの立証を進めていくことになります。

 

時効になっていないか。

時効という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
不貞行為の慰謝料請求にも時効があり、3年で時効になります。
それでは、いつの時点から3年の計算が始まるのでしょうか。
不貞行為では、不貞があった事実と不貞をした人物が分かった時点からとされています。
ただし、請求する慰謝料の種類などによって若干起算点が異なることもあります。
詳しくは、専門家である弁護士にご相談ください。

実質的な婚姻関係破綻後の不貞ではないか。

離婚した後に、元の配偶者が他人と男女関係に入っても違法にならないのは当然です。
それでは、正式な離婚までは至っていないものの、
実質的には婚姻関係が破綻した状態のときに、配偶者が不貞行為を行った場合はどうでしょうか。
この場合には、守るべき平穏な婚姻生活はないとして、慰謝料請求が認められない場合があります。

実質的な婚姻関係破綻の典型的なケースは、
 ・離婚の話し合いが進んでいる
・夫婦関係が悪化し、別居している
というものがあります。
夫婦が別居している場合でも関係修復に向けて努力しているケースでは、実質的な婚姻関係が破綻していないと判断されることも多いようです。

以上の通り、不貞行為に対する慰謝料請求といっても、様々な考慮事項があります。
慰謝料を請求したい、慰謝料を請求されているのいずれであっても、
まずは一度専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。